株式の併合の登記手続き

1.株式の併合

(1)条文

参照条文

会社法(平成十七年法律第八十六号)

(株式の併合)
第百八十条 
株式会社は、株式の併合をすることができる。
2 株式会社は、株式の併合をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 併合の割合
二 株式の併合がその効力を生ずる日(以下この款において「効力発生日」という。)
三 株式会社が種類株式発行会社である場合には、併合する株式の種類
四 効力発生日における発行可能株式総数
3 前項第四号の発行可能株式総数は、効力発生日における発行済株式の総数の四倍を超えることができない。ただし、株式会社が公開会社でない場合は、この限りでない。
4 取締役は、第二項の株主総会において、株式の併合をすることを必要とする理由を説明しなければならない。

(効力の発生)
第百八十二条 
株主は、効力発生日に、その日の前日に有する株式(種類株式発行会社にあっては、第百八十条第二項第三号の種類の株式。以下この項において同じ。)の数に同条第二項第一号の割合を乗じて得た数の株式の株主となる。
2 株式の併合をした株式会社は、効力発生日に、第百八十条第二項第四号に掲げる事項についての定めに従い、当該事項に係る定款の変更をしたものとみなす。

(2)おおまかな流れ

株式の併合とは、「10株をあわせて1株にする」というように、数個の株式を併せてそれより少数の株式とすることをいう。

投資単位の調整のほか、少数株主を排除するようなことも可能(たとえば「10株をあわせて1株にする」とすると9株以下の株式しか保有していない株主は、端数株式として金銭で処理されてしまう。)。

このように、株主にとっては、大きな影響を及ぼしうる行為であるため、つぎのような手続きをとっていく必要がある。

  1. 株式の併合について株主総会決議
    (必要に応じて種類株主総会決議)
  2. 株主への通知又は公告
  3. 反対株主の株式買取請求
  4. 【効力発生】
  5. 端数株式の処理

以上のほかにも、事前・事後の開示書面の備置きが必要となっている。(182条の2、182条の6)

また、株式の併合と発行可能株式総数は変動しないが、180条2項4号のとおり、株式併合の決議において「併合後の発行可能株式総数」を定めておく必要がある。
なお、参考までに株式分割における発行可能株式総数の取り扱いは次の通り。

参照条文

会社法(平成十七年法律第八十六号)

(効力の発生等)
第百八十四条 
(・・・)
2 株式会社(現に二以上の種類の株式を発行しているものを除く。)は、第四百六十六条【定款の変更】の規定にかかわらず、株主総会の決議によらないで、前条第二項第二号の日【分割の効力発生日】における発行可能株式総数をその日の前日の発行可能株式総数に同項第一号の割合を乗じて得た数の範囲内で増加する定款の変更をすることができる。

2.株式併合の手続き

(1)決議要件

参照条文

(株主総会の決議)
第三百九条 
(・・・)
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。
(・・・)
四 第百八十条第二項の株主総会
(・・・)

株式の併合に関する株主総会決議は、特別決議である。

(2)株主に対する通知又は公告

参照条文

(株主に対する通知等)
第百八十一条 
株式会社は、効力発生日の二週間前までに、株主(種類株式発行会社にあっては、前条第二項第三号の種類の種類株主。以下この款において同じ。)及びその登録株式質権者に対し、同項各号に掲げる事項を通知しなければならない。
2 前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。

効力発生日の2週間前までに、つぎの事項を通知すること。

  • 併合の割合
  • 株式の併合がその効力を生ずる日
  • 株式会社が種類株式発行会社である場合には、併合する株式の種類
  • 効力発生日における発行可能株式総数

なお、通知は公告に代えることができる。
株主数が少ない会社であれば、個別通知が原則になるのだろう。

(3)株券発行会社の場合

参照条文

(株券の提出に関する公告等)
第二百十九条 
株券発行会社は、次の各号に掲げる行為をする場合には、当該行為の効力が生ずる日(第四号の二に掲げる行為をする場合にあっては、第百七十九条の二第一項第五号に規定する取得日。以下この条において「株券提出日」という。)までに当該株券発行会社に対し当該各号に定める株式に係る株券を提出しなければならない旨を株券提出日の一箇月前までに、公告し、かつ、当該株式の株主及びその登録株式質権者には、各別にこれを通知しなければならない。ただし、当該株式の全部について株券を発行していない場合は、この限りでない。
(・・・)
二 株式の併合 全部の株式(種類株式発行会社にあっては、第百八十条第二項第三号の種類の株式)
(・・・)

株式の併合にあっては、株券提出に関する規定が適用されるため、注意が必要である。

(4)反対株主の買取請求権

参照条文

(反対株主の株式買取請求)
第百八十二条の四 
株式会社が株式の併合をすることにより株式の数に一株に満たない端数が生ずる場合には、反対株主は、当該株式会社に対し、自己の有する株式のうち一株に満たない端数となるものの全部を公正な価格で買い取ることを請求することができる。
2 前項に規定する「反対株主」とは、次に掲げる株主をいう。
一 第百八十条第二項の株主総会に先立って当該株式の併合に反対する旨を当該株式会社に対し通知し、かつ、当該株主総会において当該株式の併合に反対した株主(当該株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)
二 当該株主総会において議決権を行使することができない株主
3 株式会社が株式の併合をする場合における株主に対する通知についての第百八十一条第一項の規定の適用については、同項中「二週間」とあるのは、「二十日」とする。
4 第一項の規定による請求(以下この款において「株式買取請求」という。)は、効力発生日の二十日前の日から効力発生日の前日までの間に、その株式買取請求に係る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない。
5 株券が発行されている株式について株式買取請求をしようとするときは、当該株式の株主は、株式会社に対し、当該株式に係る株券を提出しなければならない。ただし、当該株券について第二百二十三条の規定による請求をした者については、この限りでない。
6 株式買取請求をした株主は、株式会社の承諾を得た場合に限り、その株式買取請求を撤回することができる。
7 第百三十三条の規定は、株式買取請求に係る株式については、適用しない。

(株式の価格の決定等)
第百八十二条の五 
株式買取請求があった場合において、株式の価格の決定について、株主と株式会社との間に協議が調ったときは、株式会社は、効力発生日から六十日以内にその支払をしなければならない。
2 株式の価格の決定について、効力発生日から三十日以内に協議が調わないときは、株主又は株式会社は、その期間の満了の日後三十日以内に、裁判所に対し、価格の決定の申立てをすることができる。
3 前条第六項の規定にかかわらず、前項に規定する場合において、効力発生日から六十日以内に同項の申立てがないときは、その期間の満了後は、株主は、いつでも、株式買取請求を撤回することができる。
4 株式会社は、裁判所の決定した価格に対する第一項の期間の満了の日後の法定利率による利息をも支払わなければならない。
5 株式会社は、株式の価格の決定があるまでは、株主に対し、当該株式会社が公正な価格と認める額を支払うことができる。
6 株式買取請求に係る株式の買取りは、効力発生日に、その効力を生ずる。
7 株券発行会社は、株券が発行されている株式について株式買取請求があったときは、株券と引換えに、その株式買取請求に係る株式の代金を支払わなければならない。

株式買取請求をすることのできる「反対株主」は、株式会社が株式の併合をすることにより株式の数に一株に満たない端数が生ずる場合にあって、つぎのいずれかに該当する者。

  • つぎの行為をおこなった株主
    • 株主総会に先立って当該株式の併合に反対する旨を当該株式会社に対し通知し、かつ
    • 当該株主総会において当該株式の併合に反対(当該株主総会において議決権を行使することができる者であることが前提)した者
  • 株主総会において議決権を行使することができない株主

なお、株式買取請求による自己株式の取得にあっては、財源規制は適用されないものの、つぎのとおり業務執行者が超過額(分配可能額を超えた金額)の支払い義務を負うことがある。
(会社側は、実施のタイミングに留意する必要があるよ、ということか。)

参照条文

(買取請求に応じて株式を取得した場合の責任)
第四百六十四条 
株式会社が第百十六条第一項又は第百八十二条の四第一項の規定による請求に応じて株式を取得する場合において、当該請求をした株主に対して支払った金銭の額が当該支払の日における分配可能額を超えるときは、当該株式の取得に関する職務を行った業務執行者は、株式会社に対し、連帯して、その超過額を支払う義務を負う。ただし、その者がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。
2 前項の義務は、総株主の同意がなければ、免除することができない。

(4)損害を及ぼす恐れ

参照条文

(ある種類の種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合の種類株主総会)
第三百二十二条 
種類株式発行会社が次に掲げる行為をする場合において、ある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、当該行為は、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会(当該種類株主に係る株式の種類が二以上ある場合にあっては、当該二以上の株式の種類別に区分された種類株主を構成員とする各種類株主総会。以下この条において同じ。)の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。
(・・・)
二 株式の併合又は株式の分割
(・・・)
2 種類株式発行会社は、ある種類の株式の内容として、前項の規定による種類株主総会の決議を要しない旨を定款で定めることができる。

種類株式発行会社においては、株式の併合につき、322条が適用されることに注意。

「ある種類の種類株主に損害を及ぼすおそれ」とは?

3.発行可能株式総数との関係

(1)株式併合の決議において定めるべき事項

前述の通り、「効力発生日における発行可能株式総数」は、株式併合の決議において定めるべき事項である(180条2項4号)。

(2)定款変更とみなされる

また、効力発生日においては、上記決議をもって定款変更があったとみなされる(182条2項)。

4.株式併合の登記手続き

(1)添付書類

  • 株主総会議事録
  • 株主リスト
  • (種類株主総会議事録及び株主リスト)
  • 株券発行会社においては、株券提供公告をしたことを証する書面
    (注:株券発行会社だけど株券を発行していない場合)

(2)登録免許税

3万円

別表第一24号(1)ツ

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