最近よく見る「eKYC」について、
いろいろな文献をみながらまとめ。内容については、まったく保証しない。
1.eKYCとは
そもそも「KYC」とは「Know Your Customer」の略語である。直訳すれば「顧客を知る」ということ。
「KYC」の意味するところは「(金融取引等において)顧客の本人確認を行う一連の手続き」である。
そして、接頭辞の「e」は「electronic」であり、つまるところeKYCは「オンライン上での本人確認手続き」の意味である。
2.本人確認とは
本人確認とは、取引の相手方の特定及び確認記録の保存を意味し、広義では特定された取引相手方に取引相手としての資格があること(例:未成年ではないか)や好ましからざる人物でないこと(例:反社会的組織の構成員でないか)の確認も含むものと思われる。業務においては、受託する手続の当事者本人であるかどうかも含まれる。
確認時の流れとしては、
①確認対象者より、身分証明書等の本人確認書類の提示を受ける。
②提示を受けた本人確認書類により住所・氏名・生年月日・顔写真などを確認する。
③確認対象者が、②で特定される人物であることを確認する。
④(場合による)確認対象者が好ましからざる人物でないことを確認する
⑤(場合による)確認対象者が、手続当事者と一致することを確認する。
「eKYC」は、以上の一連の手続きをすべてオンライン上で行うもの。
3.犯収法との関係
犯収法上は、本人確認につき、従前は「対面」or「非対面+郵送」であった。そのため「eKYC」しようとしても、どうしても郵送手続きが入ってきてしまう。
この点が、近時改正により、法的にはクリアされた。
改正後の犯収法は、つぎのように新たな確認方法を定義している。
犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則(平成二十年内閣府・総務省・法務省・財務省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省令第一号)
(顧客等の本人特定事項の確認方法)
第六条 法第四条第一項に規定する主務省令で定める方法のうち同項第一号に掲げる事項に係るものは、次の各号に掲げる顧客等の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める方法とする。
(・・・)
ホ 当該顧客等又はその代表者等から、特定事業者が提供するソフトウェアを使用して、本人確認用画像情報(当該顧客等又はその代表者等に当該ソフトウェアを使用して撮影をさせた当該顧客等の容貌及び写真付き本人確認書類の画像情報であって、当該写真付き本人確認書類に係る画像情報が、当該写真付き本人確認書類に記載されている氏名、住居及び生年月日、当該写真付き本人確認書類に貼り付けられた写真並びに当該写真付き本人確認書類の厚みその他の特徴を確認することができるものをいう。)の送信を受ける方法
ヘ 当該顧客等又はその代表者等から、特定事業者が提供するソフトウェアを使用して、本人確認用画像情報(当該顧客等又はその代表者等に当該ソフトウェアを使用して撮影をさせた当該顧客等の容貌の画像情報をいう。)の送信を受けるとともに、当該顧客等又はその代表者等から当該顧客等の写真付き本人確認書類(氏名、住居、生年月日及び写真の情報が記録されている半導体集積回路(半導体集積回路の回路配置に関する法律(昭和六十年法律第四十三号)第二条第一項に規定する半導体集積回路をいう。以下同じ。)が組み込まれたものに限る。)に組み込まれた半導体集積回路に記録された当該情報の送信を受ける方法
ト 当該顧客等又はその代表者等から、特定事業者が提供するソフトウェアを使用して、本人確認用画像情報(当該顧客等又はその代表者等に当該ソフトウェアを使用して撮影をさせた当該顧客等の本人確認書類のうち次条第一号又は第四号に定めるもの(同条第一号ニ及びホに掲げるものを除き、一を限り発行又は発給されたものに限る。以下トにおいて単に「本人確認書類」という。)の画像情報であって、当該本人確認書類に記載されている氏名、住居及び生年月日並びに当該本人確認書類の厚みその他の特徴を確認することができるものをいう。)の送信を受け、又は当該顧客等若しくはその代表者等に当該ソフトウェアを使用して読み取りをさせた当該顧客等の本人確認書類(氏名、住居及び生年月日の情報が記録されている半導体集積回路が組み込まれたものに限る。)に組み込まれた半導体集積回路に記録された当該情報の送信を受けるとともに、次に掲げる行為のいずれかを行う方法(取引の相手方が次の⑴又は⑵に規定する氏名、住居及び生年月日の確認に係る顧客等になりすましている疑いがある取引又は当該確認が行われた際に氏名、住居及び生年月日を偽っていた疑いがある顧客等(その代表者等が氏名、住居及び生年月日を偽っていた疑いがある顧客等を含む。)との間における取引を行う場合を除く。)
(1) 他の特定事業者が令第七条第一項第一号イに掲げる取引又は同項第三号に定める取引を行う際に当該顧客等について氏名、住居及び生年月日の確認を行い、当該確認に係る確認記録を保存し、かつ、当該顧客等又はその代表者等から当該顧客等しか知り得ない事項その他の当該顧客等が当該確認記録に記録されている顧客等と同一であることを示す事項の申告を受けることにより当該顧客等が当該確認記録に記録されている顧客等と同一であることを確認していることを確認すること。
(2) 当該顧客等の預金又は貯金口座(当該預金又は貯金口座に係る令第七条第一項第一号イに掲げる取引を行う際に当該顧客等について氏名、住居及び生年月日の確認を行い、かつ、当該確認に係る確認記録を保存しているものに限る。)に金銭の振込みを行うとともに、当該顧客等又はその代表者等から当該振込みを特定するために必要な事項が記載された預貯金通帳の写し又はこれに準ずるものの送付を受けること。
(・・・)
以前から読みにくい条文であったが、さらにステップアップしている。「本人確認用画像情報」というのが多義的・・・
6条1項1号ホ=「当該顧客等の容貌の画像」+「本人確認書類の画像情報」の送信
(※本人確認書類の画像は、厚みといった特徴も確認できる必要あり)
6条1項1号ヘ=「当該顧客等の容貌の画像」+「本人確認書類のICチップに保存されている氏名、住居、生年月日及び写真の情報」の送信
6条1項1号ト(1)=
「特定の本人確認書類の画像情報」又は「特定の本人確認書類のICチップに保存されている氏名、住居、生年月日の情報」の送信
プラス他の特定事業者(銀行等)が「他の特定事業者(銀行等)による本人確認記録」+「顧客等しか知り得ない事項等の申告を受けること」により同一人物であることを確認
6条1項1号ト(2)=
「特定の本人確認書類の画像情報」又は「特定の本人確認書類のICチップに保存されている氏名、住居、生年月日の情報」の送信
プラス「当該顧客の本人確認記録が保存されている預金又は貯金口座取引のより設けられた預金又は貯金口座に少額を入金し、振込があったことを確認できる通帳コピー等の送付を受けること」???