目次
1.合併手続きにおいて種類株主総会の決議が必要になるとき
網羅的には検討できないけれど、基本的なところについて、順に確認をしていく。
2.種類株主に損害を及ぼすおそれがあるとき
(1)条文
会社法(平成十七年法律第八十六号)
(ある種類の種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合の種類株主総会)
第三百二十二条
種類株式発行会社が次に掲げる行為をする場合において、ある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、当該行為は、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会(当該種類株主に係る株式の種類が二以上ある場合にあっては、当該二以上の株式の種類別に区分された種類株主を構成員とする各種類株主総会。以下この条において同じ。)の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。
一 次に掲げる事項についての定款の変更(第百十一条第一項又は第二項に規定するものを除く。)
イ 株式の種類の追加
ロ 株式の内容の変更
ハ 発行可能株式総数又は発行可能種類株式総数の増加
(・・・)
七 合併
八 吸収分割
九 吸収分割による他の会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部の承継
十 新設分割
十一 株式交換
十二 株式交換による他の株式会社の発行済株式全部の取得
十三 株式移転
十四 株式交付
2 種類株式発行会社は、ある種類の株式の内容として、前項の規定による種類株主総会の決議を要しない旨を定款で定めることができる。
3 第一項の規定は、前項の規定による定款の定めがある種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会については、適用しない。ただし、第一項第一号に規定する定款の変更(単元株式数についてのものを除く。)を行う場合は、この限りでない。
4 ある種類の株式の発行後に定款を変更して当該種類の株式について第二項の規定による定款の定めを設けようとするときは、当該種類の種類株主全員の同意を得なければならない。
(2)定款において「決議を要しない旨」を定めることができる
322条2項に記載のとおり。
「322条1項の規定による種類株主総会の決議を要しない旨」が記載されていれば、第一項第一号に規定する定款の変更でない限り、種類株主総会の決議は不要。
(3)「損害を及ぼすおそれ」とは?
自益権について検討すれば良いのか?
共益権について検討すれば良いのか?
そもそも、合併による経済的損害の有無を、客観的に判断できるのか?
(そうして不要と判断したが、事後に「損害を及ぼす恐れあり」とされたら困ってしまうのではないか?)
などと色々考えていくと、たどりつく結論は1つであろう。
3.合併についての拒否権が付与されている株式がある場合
(種類株主総会の決議を必要とする旨の定めがある場合)
第三百二十三条
種類株式発行会社において、ある種類の株式の内容として、株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、第四百七十八条第八項に規定する清算人会設置会社にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項について、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とする旨の定めがあるときは、当該事項は、その定款の定めに従い、株主総会、取締役会又は清算人会の決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。
4.消滅会社において譲渡制限株式以外の株式を有する株主に、対価として譲渡制限株式等を交付する場合
(吸収合併契約等の承認等)
第七百八十三条
(・・・)
3 吸収合併消滅株式会社又は株式交換完全子会社が種類株式発行会社である場合において、合併対価等の全部又は一部が譲渡制限株式等(譲渡制限株式その他これに準ずるものとして法務省令で定めるものをいう。以下この章において同じ。)であるときは、吸収合併又は株式交換は、当該譲渡制限株式等の割当てを受ける種類の株式(譲渡制限株式を除く。)の種類株主を構成員とする種類株主総会(当該種類株主に係る株式の種類が二以上ある場合にあっては、当該二以上の株式の種類別に区分された種類株主を構成員とする各種類株主総会)の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる株主が存しない場合は、この限りでない。
(・・・)
(前提1)吸収合併消滅株式会社が種類株式発行会社である場合
(前提2)合併対価等の全部又は一部が譲渡制限株式等である場合
当該譲渡制限株式等の割当てを受ける種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会が必要。
なお、当該譲渡制限株式等の割当てを受ける種類の株式が2以上の株式の種類に区別される場合には、それぞれの種類ごとの種類株主総会決議が必要となる。
ただし、当該譲渡制限株式等の割当てを受ける種類の株式が、譲渡制限株式である場合には、当該種類株主を構成員とする種類株主総会は不要。
いやぁ読みにくい!!
会社法施行規則(平成十八年法務省令第十二号)
(譲渡制限株式等)
第百八十六条
法第七百八十三条第三項に規定する法務省令で定めるものは、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める株式会社の取得条項付株式(当該取得条項付株式に係る法第百八条第二項第六号ロの他の株式の種類が当該各号に定める株式会社の譲渡制限株式であるものに限る。)又は取得条項付新株予約権(当該取得条項付新株予約権に係る法第二百三十六条第一項第七号ニの株式が当該各号に定める株式会社の譲渡制限株式であるものに限る。)とする。
一 吸収合併をする場合 吸収合併存続株式会社
二 株式交換をする場合 株式交換完全親株式会社
三 新設合併をする場合 新設合併設立株式会社
四 株式移転をする場合 株式移転設立完全親会社
5.対価が持分等である場合
(吸収合併契約等の承認等)
第七百八十三条
(・・・)
4 吸収合併消滅株式会社又は株式交換完全子会社が種類株式発行会社である場合において、合併対価等の全部又は一部が持分等であるときは、吸収合併又は株式交換は、当該持分等の割当てを受ける種類の株主の全員の同意がなければ、その効力を生じない。
(・・・)
これは、理解しやすいかも。
6.存続会社において、ある種類の株式(譲渡制限株式。かつ定款において、当該株式の募集につき種類株主総会決議を要しない旨の定めがないもの。)を消滅会社の株主の交付する場合
(吸収合併契約等の承認等)
第七百九十五条
(・・・)
4 存続株式会社等が種類株式発行会社である場合において、次の各号に掲げる場合には、吸収合併等は、当該各号に定める種類の株式(譲渡制限株式であって、第百九十九条第四項の定款の定めがないものに限る。)の種類株主を構成員とする種類株主総会(当該種類株主に係る株式の種類が二以上ある場合にあっては、当該二以上の株式の種類別に区分された種類株主を構成員とする各種類株主総会)の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる株主が存しない場合は、この限りでない。
一 吸収合併消滅株式会社の株主又は吸収合併消滅持分会社の社員に対して交付する金銭等が吸収合併存続株式会社の株式である場合 第七百四十九条第一項第二号イ【合併対価たる株式】の種類の株式
(・・・)
(募集事項の決定)
第百九十九条 株式会社は、その発行する株式又はその処分する自己株式を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集株式(当該募集に応じてこれらの株式の引受けの申込みをした者に対して割り当てる株式をいう。以下この節において同じ。)について次に掲げる事項を定めなければならない。
一 募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び数。以下この節において同じ。)
二 募集株式の払込金額(募集株式一株と引換えに払い込む金銭又は給付する金銭以外の財産の額をいう。以下この節において同じ。)又はその算定方法
三 金銭以外の財産を出資の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及び価額
四 募集株式と引換えにする金銭の払込み又は前号の財産の給付の期日又はその期間
五 株式を発行するときは、増加する資本金及び資本準備金に関する事項
(・・・)
4 種類株式発行会社において、第一項第一号の募集株式の種類が譲渡制限株式であるときは、当該種類の株式に関する募集事項の決定は、当該種類の株式を引き受ける者の募集について当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要しない旨の定款の定めがある場合を除き、当該種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。
合併対価たる株式が「ある種類の株式」であった場合に、その種類株主を構成員とする各種類株主総会(当該種類株式が2種類以上ある場合には種類別に区分した種類株主総会)の決議が必要となる。
ただし、当該種類株式は「譲渡制限株式」であり、かつ「当該種類の株式を引き受ける者の募集について当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要しない旨の定款の定め」がないものに限られる。
いやぁ読みにくい!!
7.簡易合併や略式合併のように決議省略できるのか?
(1)条文
(吸収合併契約等の承認を要しない場合等)
第七百九十六条
前条第一項から第三項までの規定は、吸収合併消滅会社、吸収分割会社又は株式交換完全子会社(以下この目において「消滅会社等」という。)が存続株式会社等の特別支配会社である場合には、適用しない。ただし、吸収合併消滅株式会社若しくは株式交換完全子会社の株主、吸収合併消滅持分会社の社員又は吸収分割会社に対して交付する金銭等の全部又は一部が存続株式会社等の譲渡制限株式である場合であって、存続株式会社等が公開会社でないときは、この限りでない。
2 前条第一項から第三項までの規定は、第一号に掲げる額の第二号に掲げる額に対する割合が五分の一(これを下回る割合を存続株式会社等の定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えない場合には、適用しない。ただし、同条第二項各号に掲げる場合又は前項ただし書に規定する場合は、この限りでない。
一 次に掲げる額の合計額
イ 吸収合併消滅株式会社若しくは株式交換完全子会社の株主、吸収合併消滅持分会社の社員又は吸収分割会社(以下この号において「消滅会社等の株主等」という。)に対して交付する存続株式会社等の株式の数に一株当たり純資産額を乗じて得た額
ロ 消滅会社等の株主等に対して交付する存続株式会社等の社債、新株予約権又は新株予約権付社債の帳簿価額の合計額
ハ 消滅会社等の株主等に対して交付する存続株式会社等の株式等以外の財産の帳簿価額の合計額
二 存続株式会社等の純資産額として法務省令で定める方法により算定される額
3 前項本文に規定する場合において、法務省令で定める数の株式(前条第一項の株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)を有する株主が第七百九十七条第三項の規定による通知又は同条第四項の公告の日から二週間以内に吸収合併等に反対する旨を存続株式会社等に対し通知したときは、当該存続株式会社等は、効力発生日の前日までに、株主総会の決議によって、吸収合併契約等の承認を受けなければならない。
(2)いずれも「前条第一項から第三項までの規定を適用しない」
いずれも「前条【795条】第一項から第三項までの規定を適用しない」と記載されている。
そして、795条において「種類株主総会の決議」について記載されているのは4項である。