目次
1.第二期成年後見制度利用促進基本計画に係る中間検証報告書
(1)厚生労働省HPに掲載されている
(2)中間検証報告書の目的
第二期成年後見制度利用促進基本計画においては、地域連携ネットワークにおける権利擁護支援策の1方策として成年後見制度利用促進の取組をさらに進めていくことを目標にしている。
より具体的に言えば、つぎの4点を目標に掲げており、中間検証報告書は、これらの目標につき「施策の進捗状況」「KPIの達成状況」「中間年度における評価」「今後の対応」を示している。
- 成年後見制度等の見直しに向けた検討と総合的な権利擁護支援策の充実
- 尊厳のある本人らしい生活を継続するための成年後見制度の運用改善等
- 権利擁護支援の地域連携ネットワークづくり
- 優先して取り組む事項
- 任意後見制度の利用促進について
- 担い手の確保・育成等の推進について
- 市町村長申立ての適切な実施と成年後見制度利用支援事業の推進について
- 地方公共団体による行政計画等の策定について
- 都道府県の機能強化による権利擁護支援の地域連携ネットワークづくりについて
国・地方公共団体・関係団体に対しては、今回の検証結果を踏まえ、第二期計画の期間である令和8年度末までの間に、一層の取組の推進が求められている。
2.中間検証報告書の構成
(1)目次を引用
- はじめに
- 各施策の進捗状況及び個別の課題の整理・検討
- 成年後見制度等の見直しに向けた検討と総合的な権利擁護支援策の充実
- 成年後見制度等の見直しに向けた検討について
- 総合的な権利擁護支援策の充実について
- 成年後見制度と日常生活自立支援事業等との連携の推進及び同事業の実施体制の強化
- 新たな連携・協力体制の構築による生活支援・意思決定支援の検討
- 都道府県単位での新たな取組の検討
- 尊厳のある本人らしい生活を継続するための成年後見制度の運用改善等
- 本人の特性に応じた意思決定支援とその浸透について
- 適切な後見人等の選任・交代の推進等について
- 家庭裁判所による適切な後見人等の選任・交代の推進
- 後見人等に関する苦情等への適切な対応
- 適切な報酬の算定に向けた検討及び報酬助成の推進等
- 適切な後見人等の選任・交代の推進等に関するその他の取組
- 不正防止の徹底と利用しやすさの調和等について
- 後見制度支援信託及び後見制度支援預貯金の普及等
- 家庭裁判所の適切な監督に向けた取組
- 専門職団体における取組
- 成年後見制度を安心して利用できるようにするための更なる検討
- 各種手続における後見事務の円滑化等について
- 権利擁護支援の地域連携ネットワークづくり
- 優先して取り組む事項
- 任意後見制度の利用促進について
- 周知・広報等に関する取組
- 任意後見制度の趣旨に沿った適切な運用の確保に関する取組
- 担い手の確保・育成等の推進について
- 市民後見人の育成・活躍支援
- 法人後見の担い手の育成
- 専門職後見人の確保・育成等
- 親族後見人への支援
- 市町村長申立ての適切な実施と成年後見制度利用支援事業の推進について
- 市町村長申立ての適切な実施
- 成年後見制度利用支援事業の推進
- 地方公共団体による行政計画等の策定について
- 都道府県の機能強化による権利擁護支援の地域連携ネットワークづくりについて
- 任意後見制度の利用促進について
- その他
- 成年後見制度等の見直しに向けた検討と総合的な権利擁護支援策の充実
- おわりに
(2)目次から思うこと
成年後見制度の法改正に関係する項目が多く含まれること。
こちらは法務省の法制審議会で絶賛審議中。
そう考えると、運用改善や既存の任意後見の利用促進による効果は限定的か?
(とりわけ任意後見は、制度周知より制度改善しないとマイナスイメージの拡散になるのでは・・)
「新たな連携・協力体制の構築による生活支援・意思決定支援の検討」については、各地で様々な取り組みが進んでいるようで非常に楽しみ。
というわけで、以下では法改正にかかわる部分はスキップ。
また、あくまでレポート作成用のメモ書きです。
3.総合的な権利擁護支援策の充実について
成年後見制度以外の権利擁護支援策の充実を目的とするもの。
(1)日常生活自立支援事業との連携や同事業の推進
- 「日常生活自立支援事業関連諸制度との役割分担検討チェックシート」
- 「日常生活自立支援事業実施のための手引き・様式」
- 都道府県等に制度間の移行調整等を行う連携コーディネーターを配置
課題としては、生活保護制度との適正な役割分担、日常生活自立支援事業の待機者が発生していること(一方で、地域ごとに利用者数にばらつきがあること。)が挙げられている。
(2)新たな連携・協力体制の構築による生活支援・意思決定支援の検討
- 本人への意思決定支援や事業運営の透明性や信頼性を確保しながら、簡易な金銭管理など身寄りのない人達への生活支援のサービスを利用できるようにするための取組の実施(令和4年度7自治体:長野市・豊田市・八尾市・藤沢市・黒潮町・古賀市・京極町。令和5年度9自治体:長野市・豊田市・八尾市・藤沢市・黒潮町・古賀市・京極町・山口市・大川市。)
- 身寄りのない高齢者等が抱える生活上の課題に対応するためのモデル事業(身寄りモデル事業)
- 「地域共生社会の在り方検討会議」
- 「市町村や地域包括支援センターにおける身元保証等高齢者サポート事業に関する相談への対応について」(平成30 年8月30 日付厚生労働省老健局高齢者支援課長・振興課長通知)
- 「身元保証人等がいないことのみを理由に医療機関において入院を拒否することについて」(平成30 年4月27 日厚生労働省医政局医事課長通知)
- 「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」(令和元年5月公表)
- 「身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査結果報告書」
- 「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」(令和6年6月)
モデル事業においては「第三者による預金引出しについて、市町村単位の努力だけでは金融機関の理解・協力が得られないこと及びこれに端を発し、日常的金銭管理サービス事業者の確保が困難であり、意思決定サポーターや監督・支援団体に期待される具体的な役割・立ち位置が明確にならないこと、意思決定サポーターの養成が進まないこと等の課題が把握」とされている。
4.尊厳のある本人らしい生活を継続するための成年後見制度の運用改善等について
(1)本人の特性に応じた意思決定支援とその浸透について
- 「LIFE~意思決定支援の基本的考え方~」を新たに作成し公表(各種意思決定支援ガイドラインに共通する基本的な意思決定支援の考え方について整理した資料)
- 成年後見制度利用促進ポータルサイトにおいて、意思決定支援に関する特設ページ
- 「成年後見制度利用促進体制整備研修事業」
- 最高裁判所においては、制度運用上の対応として、身上保護や意思決定支援に関する報告項目を新設する等の後見等事務報告書式の見直しを実施
- 専門職団体においては、研修制度において「意思決定支援」に関するプログラムを追加し、後見人等候補者名簿の登録要件に位置づけている。また、セミナー等での啓発や都道府県ごとの自主的取組を展開するほか、意思決定支援研修への講師派遣等にも取り組んでいる。
(2)適切な後見人等の選任・交代の推進等について
- 中間年度における評価として「家庭裁判所において、司法機関としての立場から可能な範囲で、現行法の枠組みの中で様々な工夫が行われているが、適切な選任のための自律的な検討がなお期待される状況」とされている。
後見人等の選任・交代は、家庭裁判所の判断事項であるものの、適切な後見人等の選任・交代が図られるためには、権利擁護支援チームの形成支援機能・自立支援機能の充実に向けた環境の整備が重要??
- 「後見人等に関する苦情等に対応する関係機関間連携フロー 案 」
- 「中核機関コーディネート機能強化事業」の支援メニューに、後見人等の苦情対応等にかかる関係機関間連携の構築等を内容とする取組を追加
本人に情報提供の同意が得られない場合等、他機関との情報のやり取り、個人情報の取扱いが課題。
- 「成年後見制度の運用改善等に関するワーキング・グループ」
- 民事法律扶助の代理援助を利用
- 「市町村長による成年後見制度に基づく後見開始の審判等の請求の適切な実施及び成年後見制度利用支援事業の推進について」(事務連絡)
- 最高裁判所においては、後見等事務報告書式の見直しを実施。
また、報酬の算定は、家庭裁判所の判断事項であるものの、身上保護事務の報酬算定では、個々の法律行為等の結果のみに着目して評価するのではなく、一連の身上保護事務のプロセス全体を見て評価する。
財産管理事務の報酬算定では、資産額が非常に高額である事案については事務負担の程度等事案全体を見て評価するとともに、付加報酬については専門性を適切に評価するという観点から法テラスの代理援助立替基準を参考にすることについて、各家庭裁判所の共通認識を得た。
(3)不正防止の徹底と利用しやすさの調和等について
- 令和5年1月、成年後見における預貯金管理に関する勉強会フォローアップ会議が開催され、保佐・補助類型を中心とした後見制度支援預貯金の導入状況等について情報共有。
- 不正発生件数や被害額については、平成26 年をピークに大幅に減少し、近年は年100 件台後半で推移。
- 令和4年に計191 件(被害額約7億5千万円)、令和5年には計184 件(被害額約7億円)と微減。
ただし平成28 年(計502 件(被害額約26 億円)!!)と比較すると、取組が効果を上げていると評価できるか。 - 一方で、専門職による不正事例の内訳を見てみると、令和4年に計20 件(被害額約2億1千万円)であったものが、令和5年には計29 件(被害額約2億7千万円)と増加。
平成28 年の調査結果(計30 件(被害額約9千万円))と比較しても、件数は同程度であるにもかかわらず、被害額が約3倍!!!
「専門職団体による不正防止策は現時点で十分な効果があったとまでは評価することができない」とされている。
- 所属団体の違いにより救済の内容に差異が生じるため、専門職団体の枠組みを超えた取組の検討や市民後見人・親族後見人もカバーする仕組みの導入等の検討の必要性についての指摘
- 厚生労働省においては、後見受任している法人や市民後見人を支援する社会福祉協議会等の団体における保険の導入状況を把握すべき。
(4)各種手続における後見事務の円滑化等について
- 成年後見制度利用促進ポータルサイトに金融機関等地域の関係機関向けのページを設けている。
- 一定の評価ができるものの、金融機関の窓口の対応、行政手続の場面においてもまだ十分ではない、との指摘がある。
5.権利擁護支援の地域連携ネットワークづくりについて
「包括的」で「多層的」なものが目指すべきもの。
包括的:地域における多様な分野・主体が連携。
多層的:圏域や都道府県単位の権利擁護支援のしくみも重ね合わせる。
- 中山間地・離島等の市町村において、法律専門職等の地域偏在により支援が受けにくい状況等を解消するため、「互助・福祉・司法における権利擁護支援の機能強化事業」により、地方公共団体がオンラインによる相談等を実施できるような体制整備等の促進を図る。
- 全国権利擁護相談窓口(K-ねっと)を開設し、中核機関等のみでは解決できない課題について専門的な助言を行うとともに、相談対応を通じて各地域における地域連携ネットワークづくりの促進を図る。
- 「重層的支援体制整備事業と成年後見制度利用促進に係る取組の連携について」(令和3年3月31 日厚生労働省社会・援護局地域福祉課長ほか連名通知)
- 都道府県は、人口規模が小さい市町村に対する体制整備支援の機能を強化するとともに、市町村では担えない地域連携ネットワークづくりの役割を果たすべきとされているが「取組方針を策定できている都道府県は6割程度」「市町村からの相談窓口の整備や体制整備アドバイザーの配置ができている都道府県は7割程度」とされている。
6.優先して取り組む事項について
(1)任意後見制度の利用促進
近年は、公証人の先生も「任意後見」に関するセミナー・講演に積極的との印象。
「金融機関において、意思表示が難しくなった顧客に関して任意後見受任者に任意後見監督人の選任の申立てを促している事例」!!
(2)担い手の確保・育成等の推進
- 市民後見人の育成・活躍支援
- 法人後見の担い手の育成
- 「都道府県による法人後見養成研修の推進について」(令和5年2月事務連絡)
- 「都道府県社会福祉協議会による法人後見(業務委託型)実施の手引き(案)」
- 「地域連携ネットワークにおいて、民間企業等が権利擁護支援の一部に参画する取組」
- 都道府県社会福祉協議会と市町村社会福祉協議会が連携して法人後見を実施する事例
- 過疎地域において社会福祉法人が連携して法人後見を実施する事例
- 専門職後見人の確保・育成等
- 全国的な担い手不足、若手の受任離れの進行といった専門職後見人の担い手確保に関する課題がある。
(その要因は、困難事案や無報酬事案の増加、報酬額が見合わないと感じることや担当事案の増加等が理由。)
- 全国的な担い手不足、若手の受任離れの進行といった専門職後見人の担い手確保に関する課題がある。
- 親族後見人への支援
- 中核機関では、親族後見人の情報を網羅的に把握していないため、独自に親族後見人に対するアプローチや支援の提案等を行うことが難しい状況にある。
- 中核機関が親族後見人を支援するに当たり、親族後見人を監督する家庭裁判所とどのように連携していくかが課題(中核機関と親族後見人を選任した家庭裁判所との間で後見人等の情報を共有するための法的な根拠をどのように整備するか)。
(3)市町村長申立ての適切な実施と成年後見制度利用支援事業の推進
市町村長申立ての適切な実施
- 「市町村長による成年後見制度に基づく後見開始の審判等の請求の適切な実施及び成年後見制度利用支援事業の推進について」(令和5年5月事務連絡)
- 成年後見制度利用支援事業の対象として「(1)広く低所得者を含めること」「(2)市町村長申立て以外の本人や親族による申立ての場合の申立費用及び報酬並びに後見監督人等が選任される場合の報酬も含めること」としている。
- 人口規模が小さい市町村では、市町村長申立てを実施できていない状況や、一定の人口規模を有する市町村であっても実施できていない地域があるとの指摘。
- 全国どの地域においても、本人の所得や資産の多寡にかかわらず、制度を適切に利用するためには、国において安定的な財政支援を行いつつ、全国の助成対象者や助成額等の基準を示すべきとの指摘。
(4)地方公共団体による行政計画等の策定
都道府県単位や圏域単位の協議会の整備・運営の方針等を内容とする取組方針の策定を進めている(令和6年4月1日時点で28 都道府県(約59.66%))。
(5)都道府県の機能強化による権利擁護支援の地域連携ネットワークづくり
- 管内市町村からの相談に適切に対応するための相談窓口の設置。権利擁護支援や体制整備支援等を担う専門アドバイザーの配置。
- 「成年後見制度利用促進体制整備研修事業」
都道府県担当職員や専門アドバイザー向けに、地域連携ネットワーク構築のための工夫や都道府県協議会の運営等を学ぶことができる研修を実施。 - 「成年後見制度利用促進体制整備推進事業」
都道府県における権利擁護支援や体制整備支援等を担う専門アドバイザーの配置を促進する等、都道府県による市町村支援の強化の促進。 - 「都道府県機能強化推進事業」
(管内市町村の体制整備等に課題のある都道府県に専門職等を派遣し、課題に対応するための方策等を提案する!)
7.思うこと
都道府県単位でも、取組を進めるのが大変なのだな感じた。