1.未成年後見の開始事由
(1)条文
民法(明治二十九年法律第八十九号)
第八百三十八条
後見は、次に掲げる場合に開始する。
一 未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき。
二 後見開始の審判があったとき。
(2)整理
未成年後見は、つぎの場合に開始する。
- 親権者の不在(物理的不存在(死亡)、法的不存在。)
- 親権者が管理権を有しない場合
ここで大きな影響があったのが「親権停止」の新設(2011年民法改正)
民法(明治二十九年法律第八十九号)
(親権喪失の審判)
第八百三十四条
父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権喪失の審判をすることができる。ただし、二年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは、この限りでない。
(親権停止の審判)
第八百三十四条の二
父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権停止の審判をすることができる。
2 家庭裁判所は、親権停止の審判をするときは、その原因が消滅するまでに要すると見込まれる期間、子の心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して、二年を超えない範囲内で、親権を停止する期間を定める。
(管理権喪失の審判)
第八百三十五条
父又は母による管理権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、管理権喪失の審判をすることができる。
行方不明、刑務所への収容など、事実上の不存在の場合も含むとされる。
2.未成年後見人の選任
(1)
民法(明治二十九年法律第八十九号)
(未成年後見人の指定)
第八百三十九条
未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができる。ただし、管理権を有しない者は、この限りでない。
2 親権を行う父母の一方が管理権を有しないときは、他の一方は、前項の規定により未成年後見人の指定をすることができる。
(未成年後見人の選任)
第八百四十条
前条の規定により未成年後見人となるべき者がないときは、家庭裁判所は、未成年被後見人又はその親族その他の利害関係人の請求によって、未成年後見人を選任する。未成年後見人が欠けたときも、同様とする。
2 未成年後見人がある場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前項に規定する者若しくは未成年後見人の請求により又は職権で、更に未成年後見人を選任することができる。
3 未成年後見人を選任するには、未成年被後見人の年齢、心身の状態並びに生活及び財産の状況、未成年後見人となる者の職業及び経歴並びに未成年被後見人との利害関係の有無(未成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と未成年被後見人との利害関係の有無)、未成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。
(2)整理
条文としては「指定」が先に来る。
指定がない場合に「家庭裁判所が選任」することとなる。
なお、未成年後見人がある場合にあっても、更に未成年後見人を選任することも可能(職権でも選任できる)。
さらには840条3項に記載されているとおり「法人」が未成年後見人に就任することも想定されている。
離婚後に単独親権となったケースで親権者が死亡した場合に、親権が復活するのか、後見が開始するのかについては、いくつかの裁判例があり。
民法(明治二十九年法律第八十九号)
(離婚又は認知の場合の親権者)
第八百十九条
父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
(・・・)
6 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。
注:離婚後の共同親権施行前
3.未成年後見人の権限
(1)条文
民法(明治二十九年法律第八十九号)
(未成年被後見人の身上の監護に関する権利義務)
第八百五十七条
未成年後見人は、第八百二十条から第八百二十三条【監護及び教育の権利義務、子の人格の尊重等、居所の指定、職業の許可】までに規定する事項について、親権を行う者と同一の権利義務を有する。ただし、親権を行う者が定めた教育の方法及び居所を変更し、営業を許可し、その許可を取り消し、又はこれを制限するには、未成年後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。
(2)整理
民法857条より、つぎの3つについて、親権者と同一の権利義務を有する。
- 監護・教育権
- 居所指定権
- 職業許可権
財産管理については、成年後見・未成年後見と区別されることはなく、民法859条により包括的財産管理権が与えられている。
民法(明治二十九年法律第八十九号)
(財産の管理及び代表)
第八百五十九条
後見人は、被後見人の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為について被後見人を代表する。
2 第八百二十四条ただし書【その子の行為を目的とする債務】の規定は、前項の場合について準用する。
4.複数未成年後見と権限
(1)条文
民法(明治二十九年法律第八十九号)
(未成年後見人が数人ある場合の権限の行使等)
第八百五十七条の二
未成年後見人が数人あるときは、共同してその権限を行使する。
2 未成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所は、職権で、その一部の者について、財産に関する権限のみを行使すべきことを定めることができる。
3 未成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所は、職権で、財産に関する権限について、各未成年後見人が単独で又は数人の未成年後見人が事務を分掌して、その権限を行使すべきことを定めることができる。
4 家庭裁判所は、職権で、前二項の規定による定めを取り消すことができる。
5 未成年後見人が数人あるときは、第三者の意思表示は、その一人に対してすれば足りる。
【2011年改正前】
民法(明治二十九年法律第八十九号)
(未成年後見人の数)
第八百四十二条
未成年後見人は、一人でなければならない。
(2)整理
複数の未成年後見人がいる場合、その権限行使は「共同行使」が原則である。
ただし、裁判所は、つぎのような権限付与が可能。
- 一部の未成年後見人に対して「財産に関する権限のみ」を与えることができる。
- 「財産に関する権限」については、単独での権限行使を認めうる。
- 「財産に関する権限」について、複数人の未成年後見人間で、事務分掌させることができる。
逆に言うと身上監護部分は共同行使。
(一方に財産管理権限のみをあたえることで、結果的に単独での身上監護とはなるか。)