同時死亡の推定

2016年2月5日

「同時死亡の推定って何?」とのご質問を頂きました。

整理する意味も含め、まとめてみました。

1.まず同時死亡について確認。

あるところに、

Aさんと、推定相続人(たとえば配偶者や子)であるBさんがいました。

ここではBさんは、Aさんの子であるとします(「廃除」「相続欠格事由」はないものとします。)。

Aさんが亡くなると、Aさんについて相続が開始となります。

民法第八百八十二条

相続は、死亡によって開始する。

(余談ですが、字数が575になっています。俳句みたいです。)

Aさんを相続するのは「相続人」なのですが、

実際に相続人となるのは、Aさんの配偶者であったり、子であったり、父母であったりするのですが、いずれにせよ相続人はAさん死亡時に生きている人でなければなりません。

ここで、AさんとBさんを例にとって場合を分けると、

(1)Aさん死亡時に、Bさん生存。しかし、その直後Bさん死亡。

(2)Aさん死亡時に、すでにBさん死亡。なお、Bさんには子あり。

(3)Aさん死亡と同時に、Bさん死亡(たとえば同乗していた車が事故に遭って亡くなったケース)。なお、Bさんには子あり。

となります。

なお、いずれの場合も、Bさんの子は生きているとします。

ここで、BさんがAさんの相続人であるか否かは、

(1)の場合は、YES。

いわゆる「数次相続」といい、相続が連続して起こることをいいます。

直後、Bさんが死亡しても、BさんはAさんの相続人です。

(2)の場合は、NO。

これは「代襲相続」にあたります。Bさんではなく、Bさんの子が(代襲)相続人となります。

民法第八百八十七条
2  被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。

(3)の場合は、NO。

これは「同時死亡」のケースであり、①Aさん死亡時には既にBさんは死亡しており、かつ②民法第八百八十七条2項が「相続の開始以前に」となっていることから、「代襲相続」のケースに該当します。

Bに子がいるケースで考えているので、あっさりしていますが、そうで亡いケースを考えると、死亡の前後で大きな差があることにご留意下さい。

2.同時死亡の推定について確認。

そのうえで、「同時死亡の推定」ですが、条文は次の通りです。

民法第三十二条の二
数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。

このように「死亡後になお生存していたこと」がわからない場合には、同時に死亡したものと「推定」すると民法は定めています。

同時に死亡したと推定されるのならば、同時に死亡した者同士は「被相続人・相続人」の関係になることはありません。

ただし、あくまで「推定」なので、死亡後の生存を証明することで推定を覆すことが可能です。