所有不動産記録証明制度について

1.法務省HP

令和6年4月1日からの相続登記の義務化に伴い、相続人において被相続人名義の不動産を把握しやすくすることで、相続登記の申請に当たっての当事者の手続的負担を軽減するとともに登記漏れを防止する観点から、登記官において、特定の被相続人が所有権の登記名義人として記録されている不動産について一覧的にリスト化して証明書として交付する制度のことです。 

所有不動産記録証明制度は、「自らが所有権の登記名義人」となっている不動産を検索する制度である。

そのため「特定の第三者が所有権の登記名義人」となっている不動産を検索することはできない。
(なお、相続人等の一般承継人は、被承継者が所有権の登記名義人となっている不動産の検索をすることは可能である。)
(清算結了した法人の最後の清算人からの交付請求については、質疑事項集問5-2を参照。)

2.条文

(1)不動産登記法及び不動産登記規則

参照条文

不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)

(所有不動産記録証明書の交付等)
第百十九条の二 
何人も、登記官に対し、手数料を納付して、自らが所有権の登記名義人(これに準ずる者として法務省令で定めるものを含む。)として記録されている不動産に係る登記記録に記録されている事項のうち法務省令で定めるもの(記録がないときは、その旨)を証明した書面(以下この条において「所有不動産記録証明書」という。)の交付を請求することができる。
2 相続人その他の一般承継人は、登記官に対し、手数料を納付して、被承継人に係る所有不動産記録証明書の交付を請求することができる。
3 前二項の交付の請求は、法務大臣の指定する登記所の登記官に対し、法務省令で定めるところにより、することができる。
4 前条第三項及び第四項の規定は、所有不動産記録証明書の手数料について準用する。

(登記事項証明書の交付等)
第百十九条
(・・・)
3 前二項の手数料の額は、物価の状況、登記事項証明書の交付に要する実費その他一切の事情を考慮して政令で定める。
4 第一項及び第二項の手数料の納付は、収入印紙をもってしなければならない。ただし、法務省令で定める方法で登記事項証明書の交付を請求するときは、法務省令で定めるところにより、現金をもってすることができる。
(・・・)

参照条文

不動産登記規則(平成十七年法務省令第十八号)

(所有不動産記録証明書の交付の請求情報等)
第百九十五条 
所有不動産記録証明書の交付の請求をするときは、次に掲げる事項を内容とする情報を提供しなければならない。
一 請求人の氏名又は名称、住所及び連絡先
二 請求人が法人であるときは、その代表者の氏名
三 代理人によって請求するときは、当該代理人の氏名又は名称、住所及び連絡先並びに代理人が法人であるときはその代表者の氏名
四 請求に係る不動産の所有権の登記名義人と請求人との関係
五 請求に係る不動産の登記記録を検索するために必要な所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所
六 請求に係る書面の通数
七 送付の方法により所有不動産記録証明書の交付の請求をするときは、その旨及び送付先の住所
2 次の各号に掲げる者が所有権の登記名義人として記録されている不動産に係る所有不動産記録証明書の交付の請求をする場合には、前項第五号に定める事項に加え、当該不動産の登記記録を検索するために必要な事項として、当該各号に定める事項を内容とする情報を提供することができる。
一 日本の国籍を有しない者 氏名の表音をローマ字で表示したもの
二 会社法人等番号を有する法人 会社法人等番号
3 第一項各号に掲げる事項及び前項各号に定める事項を内容とする情報は、請求に係る不動産の所有権の登記名義人ごとに作成して提供しなければならない。
4 第一項の請求をする場合には、次に掲げる情報を同項各号に掲げる事項を内容とする情報と併せて登記所に提供しなければならない。
一 請求人が請求書又は委任状に記名押印した場合におけるその印鑑に関する証明書(住所地の市町村長(特別区の区長を含むものとし、地方自治法第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあっては、市長又は区長若しくは総合区長とする。)又は登記官が作成するものに限る。)その他の請求人となるべき者が請求をしていることを証する情報
二 請求人が法人であるときは、当該法人の代表者の資格を証する情報
三 代理人によって請求をするとき(支配人等が法人を代理して第一項の請求をする場合において、当該法人の会社法人等番号を提供したときを除く。)は、当該代理人の権限を証する情報
四 請求人が請求に係る不動産の所有権の登記名義人でないときは、請求人が当該不動産の所有権の登記名義人の相続人その他の一般承継人であることを証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)
五 第一項第五号に掲げる情報として提供された氏名又は名称及び住所(第一項第一号に掲げる情報として提供されたものと異なる場合に限る。)が請求人(前号の場合にあっては、請求人の被承継人)の氏名又は名称及び住所であること(氏名又は名称及び住所に変更があった場合にあっては、変更前の氏名又は名称及び住所を含む。)を証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)
5 前項第一号の規定は、請求人が同号の情報が記載された書面(印鑑に関する証明書を除く。)を登記官に提示した場合には、適用しない。この場合において、登記官から求めがあったときは、当該書面又はその写しを登記官に提出しなければならない。
6 請求人が法人である場合において、当該法人の会社法人等番号を提供したときは、当該会社法人等番号の提供をもって、第四項第二号に掲げる情報の提供に代えることができる。
7 法人である代理人によって第一項の請求をする場合において、当該代理人の会社法人等番号を提供したときは、当該代理人の代表者の資格を証する情報を提供することを要しない。
8 法第百十九条の二第二項の規定により請求人が所有不動産記録証明書の交付の請求をする場合において、請求人が所有権の登記名義人の相続人その他の一般承継人であることを証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報に関して法定相続情報一覧図の写し若しくは法定相続情報番号又は戸籍電子証明書提供用識別符号若しくは除籍電子証明書提供用識別符号を提供したときは、当該法定相続情報一覧図の写し若しくは当該法定相続情報番号又は当該戸籍電子証明書提供用識別符号若しくは当該除籍電子証明書提供用識別符号の提供をもって、第四項第四号に掲げる情報の提供に代えることができる。ただし、法定相続情報番号を提供する場合又は戸籍電子証明書提供用識別符号若しくは除籍電子証明書提供用識別符号を提供する場合にあっては、登記官が法定相続情報を確認することができるとき又は戸籍若しくは除かれた戸籍に記録された事項を内容とする情報を確認することができるときに限る。

(所有不動産記録証明書の交付の請求の方法等)
第百九十五条の二 
所有不動産記録証明書の交付の請求は、前条第一項各号に掲げる事項及び同条第二項各号に定める事項を内容とする情報を記載した書面並びに同条第四項各号に掲げる情報を記載した書面を登記所に提出する方法によりしなければならない。
2 所有不動産記録証明書の交付の請求は、前項の方法のほか、法務大臣の定めるところにより、前条第一項各号に掲げる事項及び同条第二項各号に定める事項を内容とする情報並びに同条第四項各号に掲げる情報を電子情報処理組織を使用して登記所に提供する方法によりすることができる。この場合において、所有不動産記録証明書を登記所で受領しようとするときは、その旨の情報を提供しなければならない。

(添付書面の原本の還付請求)
第百九十五条の三 
第五十五条の規定は、前条第一項の規定により第百九十五条第四項各号に掲げる情報が記載された書面を提出した請求人について準用する。

(電子情報処理組織による請求における添付情報の特例)
第百九十五条の四 
第百九十五条の二第二項前段の規定により所有不動産記録証明書の交付の請求をする場合において、請求人が第百九十五条第一項各号に掲げる事項及び同条第二項各号に定める事項を内容とする情報又は委任による代理人の権限を証する情報に第四十二条の電子署名を行い、当該請求人の第四十三条第一項各号に掲げる電子証明書を提供したときは、当該電子証明書の提供をもって、第百九十五条第四項第一号に掲げる情報の提供に代えることができる。
2 令第十二条第二項及び第十四条の規定は、第百九十五条の二第二項前段の規定により提供する第百九十五条第四項各号に掲げる情報について準用する。
3 第四十二条の規定は前項において準用する令第十二条第二項の電子署名について、第四十三条第二項の規定は前項において準用する令第十四条の法務省令で定める電子証明書について、それぞれ準用する。

規則195条に新設されている。
(条文番号の繰り下げが起きたのか?と思ったが、もともとの195条は「削除」となっていた。さかのぼって調べてみると、削除前は「他の登記所の登記官に対してする登記事項証明書の交付の請求の制限」に関する規定で平成23年4月に削除となっていた。)

(2)関係する通達等

上記法務局HPの末尾に「民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(所有不動産記録証明書の交付等関係)(令和8年2月2日付け法務省民二第81号通達)」が掲載されている。

以下、本記事で「通達」とは、この「令和8年2月2日付け法務省民二第81号通達」を指すものとする。

また、司法書士連合会からは「所有不動産記録証明書の交付等に関する質疑事項集」(以下「質疑事項集」という。)を受けているが当該質疑事項集は公開されていないと思われるので、こちらは該当ページを紹介するにとどめる。

(3)整理

添付書類については、後記3(2)を参照。

交付の請求については、原則的に「書面」となっている。

3.交付請求について

(1)請求の方法など

全国の法務局(支局・出張所を含む)に対して請求が可能である。

「書面による請求書 + 添付書類 」が原則である。
これを全て電磁的記録により提供することも可能。「全て」なので請求はオンライン、添付書類は書面という方法が不可とされている(通達7ページ「6(2)」参照)。

証明書の交付は、窓口か郵送交付のいずれかを請求時に指定する。
郵送交付を希望する場合には、返信用封筒+切手を、請求時に提供しなければならない。

手数料は、1通1600円である。書面で請求する場合には収入印紙で納付する。
なお、該当がない場合も「該当なし」の証明書が発行されるため手数料納付は必要である。
また、検索情報ごとに作成されるので「検索情報を4通り記載したとき」には「1600円×4=6400円」となる。
ほふりの照会みたいな感じか。

参照条文

登記手数料令(昭和二十四年政令第百四十号)

第二条
(・・・)
3 所有不動産記録証明書の交付についての手数料は、一通につき千六百円とする。
(・・・)

(2)添付書類

規則195条4項に記載されている。
あらためて整理すると次のとおり。

同条同項1号
「印鑑証明書」
または「請求人となるべき者が請求をしていることを証する情報」
(1)
請求人が請求書又は委任状に記名押印した印鑑証明書(注:市町村長または登記官が作成したものに限定されている。)。
(2)
発行期間に関する制限はない。ただし発行から長期間経過しているものについては質疑事項集の問4を参照。
(3)
規則195条5項により、印鑑証明書以外の情報(マイナンバーカード等)は提示でも良い。ただし登記官はその写しの提出を求めることができる。通達では「提出を受けるものとする」と記載されている。
同条同項2号
請求人が法人であるときは、当該法人の代表者の資格を証する情報
会社法人等番号を提供することで省略可能(規則195条6項)(疑問:1号による印鑑証明書の提供は会社法人等番号を提供しても省略不可?→質疑事項集問13を参照。)
同条同項3号
代理人の権限を証する情報
(1)
支配人等が法人を代理する場合には、会社法人等番号の提供により添付は不要となる。
(2)
代理人が法人のときには、会社法人等番号の提供によって、当該法人代表者の資格証明情報の代替とすることができる(規則195条7項)。
(3)
委任状の参考様式は、上記法務省HPに記載されている。
(4)
同条同項1号に記載のとおり、委任状には実印の押印が必要となる。
同条同項4号
請求人が当該不動産の所有権の登記名義人の相続人その他の一般承継人であることを証する情報
請求人が請求に係る不動産の所有権の登記名義人でないときに提供。
法定相続情報一覧図の写しや法定相続情報番号が代替する情報となりうる(規則195条8項)。
同条同項5号
検索情報として提供された情報が請求人等の情報であることを証する情報
過去の住所等で検索する場合には、その情報が請求人の住所等であったことを示すための情報を提供しなければならない。
この点については、質疑事項集の問8「登記事項証明書の該当性」や問8-1「法人の登記事項証明書や会社法人番号の該当性」などを参照。

なお原本還付については、規則195条の3により規則55条(添付書面の原本の還付請求)が準用されている。
ただし、準用される55条1項により「印鑑に関する証明書及び当該申請のためにのみ作成された委任状」は原本還付不可となる。

4.「検索するために必要な所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所」

(1)請求にあたって必要な情報

交付請求にあたり提供が必要な情報として、規則195条1項5号は「請求に係る不動産の登記記録を検索するために必要な所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所」を求めている。

(2)細かな点の確認

5号による情報と、実際の登記記録が、どこまで一致すれば「該当あり」として証明書に記載されるのか?

通達には、つぎのような記載がある。

第3 所有不動産記録証明書の作成及び交付
所有不動産記録証明書に記載する不動産所在事項及び不動産番号

登記記録の検索の結果として、不動産の所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所と、請求人から不動産の登記記録を検索するために必要な事項として提供された所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所との表記の違いが認められるものの、同一の所有権の登記名義人であることを容易に判断することができる場合には、登記官は、当該登記記録の検索の結果抽出された不動産の不動産所在事項及び不動産番号を、当該請求人から交付の請求のあった所有不動産記録証明書に記載する

さらに法務省HPには「検索の仕様」が紹介されている。

➁ 検索の仕様

〈システムの検索の仕様〉
 請求書に記載された検索条件を登記官がシステムに入力し検索を行います。
 システム上、以下のルールに基づき、所有権の登記名義人として記録されている不動産が抽出されます。

  ・ 氏名又は名称の前方一致、かつ、住所の市区町村までが一致している人
  ・ 氏名又は名称の前方一致、かつ、住所の末尾5文字が一致している人

 以下は、ローマ字氏名が検索条件に追加されている場合
  ・ ローマ字氏名の完全一致、かつ、住所の市区町村までが一致している人
  ・ ローマ字氏名の完全一致、かつ、住所の末尾5文字が一致している人

 以下は、会社法人等番号が検索条件に追加されている場合
  ・ 会社法人等番号が完全一致している法人

 このルールに基づいて抽出された不動産から、検索条件と合致するものについて選定し、証明書に記載します(該当する不動産がない場合にはその旨を記載します。)。

【都道府県名の有り無し】
これは「氏名又は名称の前方一致、かつ、住所の末尾5文字が一致している人」でヒットするから良いか。

【合併等による市町村名の変更】
質疑事項集問9を参照。
検索時には「氏名又は名称の前方一致、かつ、住所の末尾5文字が一致している人」でヒットすると思われるが、「容易に判断」できるだろうか?
合併前住所も検索条件に追加するのが良いのだろう(この場合の手数料については、質疑事項集問24を参照。)。

【町名変更】
これは検索条件にて指定しないと困難か(町名以下の住所表記が「一丁目1番1号」だったら、抽出はされるかもしれないが「検索条件と合致している」とされるかどうか??)。
なお添付書類との関係では、質疑事項集問9を参照。

【異体字】
先述の法務省HP「検索の仕様」にて説明がされている。
「システムにおいて、JIS X 213(JIS第1~第4水準)の範囲外の文字をIPAが定義した『MJ縮退マップ』及び『登記統一文字縮退マップ』に基づきJIS X 213の範囲内の文字に変換(縮退)した上で検索」される。
要するに、登記情報上は別の漢字によって記録されている場合でも、一定の縮減ルールにより変換された上で検索がなされ、同一性の判断がされるということ。
文字X(縮退後の文字はA)、文字Y(縮退後の文字はA)、文字Z(縮退後の文字はA)という3つの文字があった場合、検索システム上は、X・Y・Zは「文字A」として取り扱われる。「文字A」で検索がされれば、それと一致する文字として、検索結果にX・Y・Zが抽出される。
縮退の関係性については、文字情報基盤検索システムで確認が可能。

参考記事(外部リンク)
文字情報基盤のデータベース検索および情報取得を行うウェブサイトです。


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