代表者複数の場合と利益相反取引

2018年4月20日

0.前提

α社 代表取締役A、B 取締役C、D、E

β社 代表取締役A 取締役F、G

(両社とも取締役会設置会社ではない)

α社においては、Bが、

β社においては、Aが、代表して不動産売買を行う。

1.条文

参照条文

第三百五十六条 
取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
一 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。
二 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。
三 株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。
2 民法第百八条の規定は、前項の承認を受けた同項第二号の取引については、適用しない。

2.α社の場合

自社の取締役Aが、第三者(β社)のためにα社と取引するから、株主総会の承認が必要。

3.β社の場合

自社の取締役Aは、第三者(α社)のためにβ社と取引するわけではないから、株主総会の承認は不要?

4.関連先例

昭和52年11月14日付民三第5691号回答
A及びB両株式会社の代表取締役がそれぞれ甲及び乙並びに甲及び丙である場合において乙がA会社を、丙がB会社をそれぞれ代表してA会社所有の不動産をB会社に売却し所有権移転登記を申請するについては、いずれの会社においても取締役会の承認を証する書面の添付を要しない。

 この場合も、上記の基本的な考え方に沿って考えれば、承認は不要ということになる。

5.気になった記載

江頭会社法(第7版)P444~

「A社の取締役Bが代表取締役を務めるC社との取引であっても、C社をB以外の代表取締役が代表するときは、A社において承認は不要。」

これに注がついていて

「本文記載の例の場合でも、A社を代表したのがBであれば、A社において承認を要する。(・・・)。多くの判例は、A社をBが代表したことのみを認定し、C社を誰が代表したかを問題にすることなく規制を課している(最判昭和39年8月28日)。」

本稿の例でいえば、

β社の取締役Aが代表取締役を務めるα社との取引であっても、
α社をA以外の代表取締役Bが代表するときは、A社において承認が不要。

ただし、β社を代表したのがAであれば、A社において承認を要する。
この場合に、α社を誰が代表したかを問題にすることはない。

6.参照されている判例

最判昭和39年8月28日

裁判要旨

 一 中小企業等協同組合法に基づく協同組合と株式会社間に取引がされた場合において、その組合の代表理事が右会社の代表取締役を兼ねているときには、前記取引について同法第三八条の規定が準用されると解すべきである。 

 取引において「誰が代表していたか」については、確認出来なかった。