目次
1.仮登記とは
(1)条文
不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)
(仮登記)
第百五条
仮登記は、次に掲げる場合にすることができる。
一 第三条各号に掲げる権利について保存等があった場合において、当該保存等に係る登記の申請をするために登記所に対し提供しなければならない情報であって、第二十五条第九号の申請情報と併せて提供しなければならないものとされているもののうち法務省令で定めるものを提供することができないとき。
二 第三条各号に掲げる権利の設定、移転、変更又は消滅に関して請求権(始期付き又は停止条件付きのものその他将来確定することが見込まれるものを含む。)を保全しようとするとき。
(登記することができる権利等)
第三条
登記は、不動産の表示又は不動産についての次に掲げる権利の保存等(保存、設定、移転、変更、処分の制限又は消滅をいう。次条第二項及び第百五条第一号において同じ。)についてする。
一 所有権
二 地上権
三 永小作権
四 地役権
五 先取特権
六 質権
七 抵当権
八 賃借権
九 配偶者居住権
十 採石権(採石法(昭和二十五年法律第二百九十一号)に規定する採石権をいう。第五十条、第七十条第二項及び第八十二条において同じ。)
(2)整理
後日の本登記(対抗力を備えた登記)のため、予め登記順位を保全するもの。
(仮登記が対抗力をもつものではない。仮登記によって「登記順位が保全」され、仮登記に基づく本登記をすると「保全された登記順位によって本登記がなされた」こととなるため、これにより本登記が、登記された順位に則して対抗力をもつことになる。
1号仮登記:物権変動が生じているものの、一定の添付情報を提供できない状態であるために行うもの。
2号仮登記:物権変動は未だ生じていないものの、物権変動を求めることができる債権的な請求権の保全を必要とする場合に行うもの。
2.1号仮登記・2号仮登記
(1)1号仮登記
不動産登記規則(平成十七年法務省令第十八号)
(法第百五条第一号の仮登記の要件)
第百七十八条
法第百五条第一号に規定する法務省令で定める情報は、登記識別情報又は第三者の許可、同意若しくは承諾を証する情報とする。
印鑑証明書は該当しない(昭和29年10月5日民事甲2022通達)。
また、あくまで許可書等の書類が添付できない場合にするものなので、許可自体が取得できていない場合(物権変動は未だ生じていない!)には2号仮登記をすべき事案となる。
(不動産登記記録例566)
原因 年月日売買
(2)2号仮登記
(不動産登記記録例567)
登記の目的 所有権移転請求権仮登記
原因 年月日売買予約
(不動産登記記録例569)
登記の目的 始期付所有権移転仮登記
原因 年月日売買(始期 年月日)
(不動産登記記録例570)
登記の目的 条件付所有権移転仮登記
原因 年月日代物弁済(条件 年月日金銭消費貸借の債務不履行)
(不動産登記記録例571)
登記の目的 条件付所有権移転仮登記
原因 年月日売買(条件 農地法第3条の許可)(注1)所有権の移転の時期を売買代金の完済時とした場合の登記原因は,「年月日売買(条件 売買代金完済)」とする。
(注2)所有権の移転の時期を農地法第3条の許可と売買代金の完済のいずれかが完了したときとした場合の登記原因は、「年月日売買(条件 農地法第3条の許可及び売買代金完済)」とする。
記録例571の注2が面白い。
複数条件がある場合には、複数条件を明記する。
4.仮登記の効力
順位保全効。「本登記の順位は、仮登記の順位による。」
不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)
(仮登記に基づく本登記の順位)
第百六条
仮登記に基づいて本登記(仮登記がされた後、これと同一の不動産についてされる同一の権利についての権利に関する登記であって、当該不動産に係る登記記録に当該仮登記に基づく登記であることが記録されているものをいう。以下同じ。)をした場合は、当該本登記の順位は、当該仮登記の順位による。
仮登記に対抗力はないが、仮登記による本登記は、仮登記の順位を引き継ぐ。そのため、当該本登記(見た目としては「仮登記」)に遅れる登記に対して優位となる。
とはいえ、仮登記自体に対抗力はないので、仮登記から本登記をするまでのあいだは仮登記権利者が劣後するケースもある(遡及効はない。)。
(権利の順位)
第四条
同一の不動産について登記した権利の順位は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記の前後による。
(・・・)
民法(明治二十九年法律第八十九号)
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
5.申請方法
(1)共同申請
共同申請だけでなく単独申請(登記権利者による)も可能。共同申請の場合において、登記識別情報の提供は不要。
不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)
(仮登記の申請方法)
第百七条
仮登記は、仮登記の登記義務者の承諾があるとき及び次条に規定する仮登記を命ずる処分があるときは、第六十条の規定にかかわらず、当該仮登記の登記権利者が単独で申請することができる。
2 仮登記の登記権利者及び登記義務者が共同して仮登記を申請する場合については、第二十二条本文の規定は、適用しない。
(共同申請)
第六十条
権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。
(登記識別情報の提供)
第二十二条
登記権利者及び登記義務者が共同して権利に関する登記の申請をする場合その他登記名義人が政令で定める登記の申請をする場合には、申請人は、その申請情報と併せて登記義務者(・・・)の登記識別情報を提供しなければならない。ただし、(・・・)。
(2)登記権利者による単独申請
107条のとおり「登記義務者の承諾」または「仮登記を命ずる処分」があるときには、登記権利者が単独で申請することができる。
登記義務者の承諾書については、つぎのとおり。
(不動産登記令19条1項に該当する承諾書であり、印鑑証明書は3カ月以内のものでなくてもよい。)
不動産登記令(平成十六年政令第三百七十九号)
(添付情報)
第七条
登記の申請をする場合には、次に掲げる情報をその申請情報と併せて登記所に提供しなければならない。
(・・・)
五 権利に関する登記を申請するときは、次に掲げる情報
(・・・)
ハ 登記原因について第三者の許可、同意又は承諾を要するときは、当該第三者が許可し、同意し、又は承諾したことを証する情報
六 前各号に掲げるもののほか、別表の登記欄に掲げる登記を申請するときは、同表の添付情報欄に掲げる情報
別表(第三条、第七条関係)
仮登記
| 項 | 登記 | 申請情報 | 添付情報 |
| 六十八 | 仮登記の登記義務者の承諾がある場合における法第百七条第一項の規定による仮登記 | イ 登記原因を証する情報 ロ 仮登記の登記義務者の承諾を証する当該登記義務者が作成した情報 | |
| 六十九 | 所有権に関する仮登記に基づく本登記 | イ 登記上の利害関係を有する第三者(・・・)があるときは、当該第三者の承諾を証する当該第三者が作成した情報(・・・)又は当該第三者に対抗することができる裁判があったことを証する情報 ロ (・・・) | |
| 七十 | 仮登記の抹消(法第百十条後段の規定により仮登記の登記上の利害関係人が単独で申請するものに限る。) | イ 登記原因を証する情報 ロ 仮登記の登記名義人の承諾を証する当該登記名義人が作成した情報又は当該登記名義人に対抗することができる裁判があったことを証する情報 ハ 登記上の利害関係を有する第三者があるときは、当該第三者の承諾を証する当該第三者が作成した情報又は当該第三者に対抗することができる裁判があったことを証する情報 |
(承諾を証する情報を記載した書面への記名押印等)
第十九条
第七条第一項第五号ハ若しくは第六号の規定又はその他の法令の規定により申請情報と併せて提供しなければならない同意又は承諾を証する情報を記載した書面には、法務省令で定める場合を除き、その作成者が記名押印しなければならない。
2 前項の書面には、官庁又は公署の作成に係る場合その他法務省令で定める場合を除き、同項の規定により記名押印した者の印鑑に関する証明書を添付しなければならない。
【参考】
(申請情報を記載した書面への記名押印等)
第十六条
申請人又はその代表者若しくは代理人は、法務省令で定める場合を除き、申請情報を記載した書面に記名押印しなければならない。
2 前項の場合において、申請情報を記載した書面には、法務省令で定める場合を除き、同項の規定により記名押印した者(委任による代理人を除く。)の印鑑に関する証明書(住所地の市町村長(特別区の区長を含むものとし、地方自治法第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあっては、市長又は区長若しくは総合区長とする。次条第一項において同じ。)又は登記官が作成するものに限る。以下同じ。)を添付しなければならない。
3 前項の印鑑に関する証明書は、作成後三月以内のものでなければならない。
(・・・)
(3)所有権に関する仮登記に基づく本登記をなすにあたって
登記上の利害関係を有する第三者の承諾が必要。
利害関係人の登記は、職権で抹消されるため。
条文については、下記109条のほかは前記(2)を参照。
不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)
(仮登記に基づく本登記)
第百九条
所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者(本登記につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この条において同じ。)がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。
2 登記官は、前項の規定による申請に基づいて登記をするときは、職権で、同項の第三者の権利に関する登記を抹消しなければならない。
(4)仮登記の登記名義人(または登記上の利害関係人)による仮登記の単独抹消
不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)
(仮登記の抹消)
第百十条
仮登記の抹消は、第六十条の規定にかかわらず、仮登記の登記名義人が単独で申請することができる。仮登記の登記名義人の承諾がある場合における当該仮登記の登記上の利害関係人も、同様とする。
6.記録方法
甲区に主登記でなされるもの
所有権移転仮登記、所有権移転請求権仮登記、始期付所有権移転仮登記、条件付所有権移転仮登記、仮登記した所有権移転の仮登記、
甲区に付記登記
仮登記した所有権の移転請求権の移転登記、仮登記した所有権の移転請求権の移転請求権の仮登記
乙区に主登記でなされるもの
抵当権設定仮登記、抵当権設定請求権仮登記、始期付抵当権設定仮登記、条件付抵当権設定仮登記、
乙区に付記登記
抵当権移転仮登記、仮登記した抵当権の移転の仮登記、仮登記した抵当権の移転請求権の移転登記、仮登記した抵当権の設定請求権の移転請求権の仮登記
