1.固定資産税の清算
(1)賦課期日
不動産の売買において、売買代金のやりとりのほかに、固定資産税の清算が行われます。
固定資産税の課税については、次の条文が規律しています。
地方税法(昭和二十五年七月三十一日法律第二百二十六号)
第三百四十三条
固定資産税は、固定資産の所有者(・・・)に課する。
2 前項の所有者とは、土地又は家屋については、登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者(・・・)として登記又は登録されている者をいう。(・・・)。
第三百五十九条
固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とする。
以上より、1月1日時点における登記簿上の所有権登記名義人が、当該年度の固定資産税の納付義務を負うのです。
そのため、1月2日以降に(あるいは1日時点で既に)所有権を喪失していたとしても、登記簿上の所有権登記名義人を納税義務者として納税通知が発行されます。
(2)真の所有者への請求
とはいえ、仮に所有者でないのに課税がされた人は、真の所有者に対して固定資産税相当額の不当利得返還請求が認められています(最三小判昭47.1.25民集26巻1号1頁)し、通常の売買であれば売買日付前後の期間によって案分し清算がなされます。
最三小判昭47.1.25民集26巻1号1頁
真実は不動産の所有者でない者が、登記簿上その所有者として登記されているために、右不動産に対する固定資産税を課せられ、これを納付した場合には、右所有名義人は、真の所有者に対し、不当利得として、右納付税額に相当する金員の返還を請求することができる。
2.競売手続きにおける固定資産税の負担
では、年度中に、競売手続きによって不動産を取得した場合に固定資産税の負担はどうなるのか?
この点について判例はなく、積極説(旧所有者は買受人に対して不当利得返還請求ができる)・消極説(買受人への請求はできない。大阪高判平23.6.30金法1942号127頁。)・折衷説(競売手続き中で固定資産税負担が反映されていたという特段の事情がない限り返還請求はできない。東京高判平13.7.31判時1764号61頁。)と諸説あるようです。
とはいえ、売却基準価額の決定に固定資産税負担を反映させる制度はなく、折衷説も事実上消極説であるとして、消極説優位と考えてよいのでしょうか。